USA



 互いの想いを撚り合わせて一つにするように、ひとしきり俺達は抱き合った。イギリスの体温が心地良くて微かに香る体臭にくらくらと酩酊する。気持良すぎてトんじゃいそうなキスを交わして、ふと気付く彼のあられもない姿。シャツは破れて胸の飾りまで露に、さり気なく下方へ視線を向けると・・・何も身につけていない彼の下半身。
 あ、やばい・・・・・・。
 イギリスはくしゃんとくしゃみをして鼻を啜ると、思い出したように服を手繰り寄せた。
「俺、シャワー浴びてくるな。お前はさっさと仕事に戻れよ」
 そう言ってそそくさと立ち上がって行こうとするイギリスの手首を掴んで、強引に引き寄せる。うわっと驚いた声を上げながら体勢を崩して落ちてくる彼の身体を、優しく受け止めて抱き締めた。
「ダメだよイギリス・・・俺、君に受け入れてもらえて、恋人になれたんだって思ったらすごく嬉しくて・・・そしたら君が欲しくて堪らないんだ。もう、我慢できないよ・・・」
 耳元に唇を寄せて甘えるような声音で囁くと、イギリスはぎょっとした顔をして慌ててぐいぐい俺を押して距離を取ろうとする。
「ちょっ・・・待てよっ!お前まだ仕事中だろ!?忘れ物取りに帰って来ただけだろ!?」
「早退する」
「サボんなっ!!」
「だって150年越しの想いが通じたんだよ?頭の中君の身体でいっぱいだよ。このまま仕事に行くなんて無理」
「ばかっエロガキっ・・・ま、待てって、あ、アメリカぁっ!!」
 きゅっと彼のペニスを握り込んで軽く扱いてあげると、イギリスはぱっと頬を朱に染めてふるふると身体を震わせた。
「ねぇ、いいだろう?」
「ふぁ・・・やっ、せめて、寝室連れてけ・・・ここ、も、やだ・・・っ!」
 俺の肩に顔を埋めて必死に刺激に耐えてるイギリスにOKと言って軽く金の髪にキスを落とすと、彼の身体を抱き上げて寝室に運んであげた。


 ベッドの上で心細そうに俺を見上げるイギリスの額にちゅっとキスをする。明るい中で見られながらするのは嫌だと言うのでカーテンを閉めた。まだ外の世界は活動的に回っている時間なのに俺達は薄暗い部屋のベッドの上、なんだか世界から切り離されたみたいだ。
「大丈夫だから・・・さっきみたいなひどいこと、しないから。痛くないように優しくするから・・・」
 不安げに揺れる翠の瞳を覗き込みながら言い聞かせるように囁く。イギリスはこくこくと頷いて、ぎゅっと目を瞑った。少しぱさついた金糸のような髪を指先に絡めながら、ゆっくりと顔を寄せていく。俺の吐息が掛かったのか瞼を縁取る睫毛がふるりと震える。それを眺めながらそっと、触れるだけのキスをした。
 最初は軽く、次は僅かに唇を押し付けて。湿った薄い唇が応えるようにそろりと開かれると、温かなそこに舌を潜り込ませた。ひくっと喉を鳴らすイギリスに大丈夫と髪を撫ぜて、少しずつ角度を深めていく。イギリスの性感を引き出すようにゆっくり丁寧に口内を舐め上げて舌を絡めると、んん・・・と甘い吐息を漏らした。苦しげに眉を寄せて俺のキスを受け入れている彼の表情に、堪らなく欲情する。
 顔を離すと上気したイギリスの顔がものすごく色っぽくて、直に下半身にずくんとキた。今すぐ挿れたい・・・けど、ちゃんと優しくしてあげたい。だから深呼吸して息を整えて、そっと彼の身体に触れる。記憶にないキスマークを辿るように重ねていく。胸の飾りもたっぷり舐めて転がして愛してあげると、イギリスはやだと呟いた。
「どうして?気持良くない?」
「そうじゃねぇけど・・・なんか、居たたまれない・・・」
「ゆっくりでいいよ、俺のこと、恋人だって思えるようになって・・・それで頭の中俺でいっぱいにして」
 優しく恋人のキスを交わして言うと、彼はこくんと頷いて再び瞳を閉じた。俺を信じてるとでも言うように・・・その身体を委ねる。そんな彼が愛しくて甘いケーキのクリームを舐め取るように全身隈なく舐め回して痕を残していく。足の指を舐めようとしたら止められたけど、全部全部愛したいんだ。白い身体が仄かにピンク色に染まって、身体の中心が緩やかに持ち上がり芯を持つ。それが堪らなく美味しそうで口に含むと途端にぐんと容量が増して、独特の青臭さとえぐみのある液体が先端からトロトロと溢れてくるのを夢中になって啜った。
「あ、アメリカ・・・やだ、それ止めてくれ・・・っ」
「何が嫌なんだい?」
 チロチロと舌先で先端を転がしながら上目遣いに聞くと、目尻に涙を浮かべたイギリスがふるふると首を左右に振って刺激に耐えているのが見えた。
「か、感じる・・・感じるの、やだ、口でされるのやだ・・・」
「俺は感じて欲しいよ・・・もっと気持ち良くなって欲しい。君の、美味しいの飲みたい」
「そういうこと言うなぁっ」
 間違いなく俺の本音なのに、イギリスはかぁっと真っ赤になって喚き立てた。
「もう弟じゃないんだよ?俺達は恋人なんだ・・・だから大丈夫、可笑しなことじゃないんだ」
「ふっ・・・ぁ・・・・・・っ」
「イギリス・・・」
 両の腕で顔を隠して啜り泣く彼の身体をぎゅっと抱き締める。震える肩を撫でて、大丈夫大丈夫と繰り返す。
「・・・もう無理?もう止める?」
 此処まできて止めるのは辛いけど、泣いてる彼に無理強いはしたくない。頭がガンガン痛むくらい爆発寸前の欲望を無理矢理捩じ伏せて、少し掠れた声で尋ねると、イギリスはそろりと俺の顔を窺うように見上げてきた。
「で、も・・・お前、辛い・・・だろ・・・?」
 涙に沈んだ瞳を向けて俺を労る、その気持ちだけで十分。だからにっこりと笑って言う。
「いいよ、君がその気になるまで待つから」
「・・・・・・っ、へーき、大丈夫・・・俺は、大丈夫だから・・・好きにしていい・・・」
 そっと彼の身体の上から退こうとすると、イギリスは必死な表情を浮かべて俺の腕を掴んできた。きっとこのまま止めれば欲望を放てなかった俺の身体が辛いとでも思ってるんだ。それじゃ俺が可哀相だと思ってるんだ・・・どこまで君は俺に甘いのだろう?自分の方こそ心の整理も付かないまま身体を繋げることを恐れて怯えているのに。
「でも・・・」
「いいから抱けよ・・・っ前戯とか、してくれなくていいから・・・」
「ダメだよ、俺はちゃんと愛し合いたい。君のこと、本気で好きなんだ。大切にしたいんだ」
「俺だって愛してる!お前のこと、もう弟だなんて思ってない、ちゃんと恋人として愛してる!」
 涙をぼろぼろ零しながら俺にしがみついてくるイギリスを、ぎゅっと力強く抱き締める。彼の口から愛してるという言葉が聞けるだけで幸せな気持ちに満たされる。伊達に150年も片想いしてない。
「その言葉だけで俺は嬉しいよ」
「頼むよ・・・抱いてくれ、俺の中お前でいっぱいにしてくれよ・・・っ」
「本当に、平気?大丈夫?続けられる?」
 こくんと頷いてまた瞳を閉じる彼に躊躇いつつ、反応を伺いながら頬に首筋に鎖骨に胸にキスを落としていく。また拒絶されるのが怖くて、中心のモノには敢えて触れない。
「そう言えばこういう場合ってローションとか使うんだよね?俺、持ってないけどどうしようか・・・?」
 準備不足を理由に彼が行為の中止を言い出せるように言ってみれば、イギリスは一瞬考えるように視線を彷徨わせて代用品の提案をしてきた。
「オイル、とかでもイケるけど・・・」
「車の?」
「料理のだっ、ばか!」
「わ、わかってたんだぞ?ちょっとしたジョークだったんだぞ!」
 信じられないとでも言いたげな呆れ顔を振り切るようにあたふたとベッドから転がり落ちるように降りて、這うようにしてキッチンに向かう。普段俺は料理をしないからキッチンにオイルなんて置いてないのだけど、料理が好きなイギリスは来てすぐに購入した。頻繁に使われて半分まで減っているボトルを手に取りながら、本当に良いのかな?と自問する。このままヤっちゃっていいのかな・・・取り返しのつかないことにならないかな・・・?


 迷いながらオイルのボトルを手に寝室へ戻ると、イギリスは身体を起こしてベッドの上に胡坐をかいて座っていた。俺の顔を見て困ったように微笑む。その横に腰掛けてどう切り出したものかと悩んでいると、彼はふぅと吐息を漏らした。
「・・・悪かったな」
「何が?」
 お互い顔を合わせずに言葉を交わす。少し時間を置いたことで彼も冷静になっただろう――俺の為に本意でない行為に身体を投げ出すなんて馬鹿げてる・・・そう思って、止めるつもりなのだろう。俺も彼の心にどうしようもない深い傷を付ける前で良かったと安堵する。
「もう吹っ切れたつもりだったんだけどさ、ちょっと悪足掻きしちまった。・・・引いたか?」
「そんなこと・・・」
 引いたのは君の方だろう?元がつくとは言え兄だった人の身体に欲情する俺に。
「もう、その気になれねぇ?」
「君の方こそ・・・無理しなくて良いんだよ?」
「無理なんかしてない。お前と繋がりたいって思ってるのはほんとなんだ。お前と・・・愛し合いたい」
 そう言って俺の背に触れてくる。まだその気だったのかと正直驚いた。彼も俺を求めてくれてる、その想いが胸を熱くする・・・同時に俺の下半身は素直にむくりと起き上がっていく。
「それで俺、考えたんだけどさ・・・」
 彼は少しばかり言い淀んで、驚くべき提案をしてきた。
「目隠しプレイってどうだろう?」
 やっぱこの人頭可笑しいよ。
「なんでそうなるんだい!?ぷ、ぷ、プレイとか・・・っ俺は普通のセックスがしたいんだぞ!」
「そりゃ俺だって普通のセックスも好きだ。けどプレイも捨てたもんじゃねぇぞ?普段と違うシチュエーションに結構盛り上がるんだぜ?」
「普段も何も俺達初めてじゃないかっ!いきなりプレイとか異常だよっ!」
「異常とか言うな!プレイじゃなきゃイけない奴に失礼だろ!」
「は?君、まさかプレイじゃなきゃイけない口じゃないだろうね!?」
「俺はなんだってイケる口だ!」
 イギリスはきっぱりと真面目な顔をして言い切った。
「そこは誇るとこじゃないだろう!?君って人はどうしてそんなに無節操なんだ!このエロ大使!」
「人を盛りのついた犬猫みてぇに言うな!俺は単に目隠ししてれば弟だった頃の面影に振り回されないで済むんじゃねぇかって思っただけだ!」
 成程。ちょっと納得した。いやいやそうは言っても許せることと許せないことがあるよね!
「そ、それでも俺は、初めてのセックスくらい君の瞳を見ながらしたいんだぞ・・・目隠しとか、お、犯してるみたいじゃないか・・・っ」
 あ、泣けてきた。好きな人を犯してるような倒錯的なセックスが初めてになると思うと泣けてきた。ていうか普通泣くよね、泣けるよね!?
「ばっ・・・お前、別に泣かなくてもいいだろ!?ちょっと言ってみただけじゃねぇかっ!お前が嫌なら別に無理にとは言わねぇよ!仕方ねぇから普通ので我慢してやる」
「我慢なんだ!?やっぱりそういうプレイのが・・・」
「違ぇよばかっ!あぁくそっ・・・オイル、持って来たな?じゃあヤれよ」
 そう言って彼はぼすんとベッドの上に大の字になった。・・・不安そうに泣かれるのも嫌だけど、そこまで吹っ切れるのもどうなんだろう?少しは恥らいなよ・・・全部、丸見えなんだぞっ!!
 なんだか投げ遣りな気分でイギリスの開かれた足の間に身体を滑り込ませる。そうしてオイルを手に取って彼の股間にびちゃっと掛けると、びくんと身体が跳ねた。
「つめたっ!」
「あ、ごめんっ、俺初めてで良くわかんなくて」
 うっすらと涙を浮かべるイギリスに反射的に謝れば、彼はえ?と瞠目した。
「初めてって・・・お前男とヤるの初めてなのか?」
「それ以前にセックスがね。こんな関係になったのは君が初めてだから」
「は!?え、ま、待て待て待てっ!!」
 慌てて起き上がろうとする身体を強引にベッドに戻す。ここまで来たらもう逃がすもんか。
「なんだいっ!?いいって言ったじゃないか!」
「違ぇよっ!そうじゃなくて初めてが俺なんかじゃまずいだろ!」
「なんで?何がまずいんだい?」
 じたばたと往生際悪く暴れる身体を押さえ込みながら意味がわからず聞き返すと、如何にもエロ大使のイギリスらしい答えが返ってきた。
「初めてなら男じゃなくて、もっと女の身体で気持ちいい思いしてからでも・・・」
「やだよ、俺は君しか抱きたくない」
「でもお前いくらなんでも初めて・・・」
「初めても二度目も三度目も全部君じゃなきゃ嫌なんだぞ」
 好きでもない人を抱いて快感ばかり得ることに何の意味があるんだ?溜まったモノを出したいなら自慰で十分だよ。俺はいつだって君だけが欲しかったから未経験なんだ。女性の身体がどうであろうと愛する君と身体を繋げること以上に気持ち良いことなんて有り得ないんだぞ。
 そうきっぱり言い切ると。
「・・・・・・っ、お前、ばか・・・っ」
 イギリスは照れて全身真っ赤に茹で上がってぽつりと零した。そんな可愛らしい彼にまたキスをする。唇と唇が触れ合うだけで堪らなく気持ちいい。舌が絡まってちゅくちゅくと唾液を交換していると麻薬でもキメてるようにふわふわする。こんなの、君だからなんだぞ。


 そっと足の間に手を差し入れるとイギリスはひくっと息を呑んだ。瞳を覗き込んで互いの想いを確認して、もう一度オイルを手に取る。少しの間手の中で温めて馴染んだところでゆっくりと彼の後孔に触れる。ふるりと震える其処は先程の俺の・・・行為のせいか、すぐに柔らかく解れて恥ずかしそうにひくついた。オイルを指先に伝わせて少しずつ彼の中へと送り込んでいく。何度もオイルを継ぎ足して抵抗がなくなると人差し指はあっけなく中に埋もれていった。
「はぁ・・・ん、ん・・・・・・っ」
 イギリスは眉を寄せながらもどかしそうに腰を揺らめかせる。中をかき混ぜるようにぐるりと動かすと甘い息を漏らした。それがもっと聞きたくて夢中になって中を掻き乱す。オイルを足して指を二本に増やすと、背を反らしてひゃうっと高い声を上げた。慌てて口を塞ぐその手を掴んで剥がす。
「ダメだよイギリス、ちゃんと声聞かせて」
「ばか・・・っ聞かせられるか、こんなの・・・っ」
「いいじゃないか、気持ち良いんだろ?理性なんか失くして俺のことだけ考えてよ」
「で、でも・・・ひゃあんっ!」
 もっともっと感じて欲しい、素直に声を上げて快楽に身を委ねて、そうして戸惑いも拘りも全部忘れて。
「確かこの辺だったよね?ここ?」
「やっあっあ、アメっ・・・あぁん、ダメ、だめぇっ!!」
 彼の中の悦いとこを二本の指で交互に撫でてはぐりぐりと押し潰し引っ掻くと、堪らないように足をばたつかせて腰をゆらゆらと振った。前立腺を直に弄られてあえなく上がる嬌声が空気に甘く溶けていく。
「気持ちいいの?感じる?」
「か、感じる・・・やっ・・・おかしく、なる・・・っ」
「ふふっイギリス可愛いんだぞ」
 ちゅっちゅと啄むようにキスをする。口の端から零れた彼の唾液をぺろりと舐めて、口の中に戻すように舌を差し入れると、迎えてくれた彼の舌が俺を求めて絡んでくる。俺を悦ばそうと世界一の技を駆使して上顎を擦り上げて舌を啄いて裏筋をつうっと辿って。舌をやんわり甘噛みされたら下半身がぞくぞくした。彼と俺のが混ざり合った唾液をイギリスは迷わずこくんと飲み込む。嬉しいな、彼がまた俺を受け入れてくれた。もっともっと受け入れて、君の中を俺でいっぱいにして。
 深いキスに苦しげに眉を寄せながら時折甘い息を漏らすイギリスに、そろそろいいかな?と尋ねる。
「三本目、挿れても・・・良い?」
 するとイギリスはゆるりと瞼を開くと翠の双眸を切なげに潤ませて、ふるふると左右に首を振った。ぱたぱたと涙が飛び散って俺の顔にも温かな雫が掛かる。
「まだダメ?」
「それより・・・お前の、欲しい・・・」
 ずくん。あ、今ちょっとイキそうになった。ていうかそっち!?俺はてっきりまだ痛いとか広がりが足りないとかで首を振ったと思ったのに!
「ちょっ・・・で、でもまだ・・・っ」
「いいから、ちゃんと・・・受け入れる、からぁ・・・っ」
 早くと強請る声に、ぶちんと何かの糸が切れた。たぶん理性とかそういう大事なモノの、だけど・・・あぁもうっこれは仕方ないよね!?煽った彼が悪いんだよね!
 ずるっと右手を引き抜くと、イギリスはふぁあっと喘いで身体をしならせた。それだけで理性が更に灼き切れる。気が急いてうまく外れないベルトを力任せに引き千切って、ジッパーを一秒にも満たない速さで下ろすと下着から自分の性器を取り出す。長きに渡って自分の右手にしか包まれたことのない怒張は、初めて他人の性器に受け入れられる歓びにぶるぶると震えて張り詰めている、そりゃもうぎっちぎちに!先端からは白濁したものがくぽくぽと溢れて滴ってる・・・もったいない、全部彼の中に注ぎ込みたいのに。
「い、挿れるよ・・・?」
「ふ・・・は、早く・・・っ来いよ・・・!」
 彼のひくつく秘蕾に宛てがって最後の確認をしたのに、待ち切れないとでも言うような一声を放たれてもう我慢できなかった。ぐりっと押し込んで、一気に貫いた。
「ひっ・・・あぁぁぁぁっ!!!」
 イギリスはびくっと身体を強張らせると、甲高い声を上げてがくんと仰け反った。俺のモノを捩じ込まれた痛みにか、見開いた瞳から涙をぼろぼろ零して戦慄いてる。そういえばゆっくりやさしく挿れてあげようって思ってたのに・・・つい奥まで強引に挿れちゃった。けど、ごめんイギリス、君のことを思いやりたいのだけど、俺、俺・・・気持ち良すぎてやさしくとか、無理・・・っ!
「やぁっ・・・あ、アメ・・・ひぁん・・・ひゃうっ!」
 ぎゅっと目を瞑ってシーツを握り締めて痛みに耐えてるイギリスを見下ろしながら、欲望の赴くままに腰を激しく振る。彼の中の襞が吸い付くように俺のペニスをやさしく包みこんでくれて、入り口がきゅうきゅう締め付けてきて、何これすっごく気持ちいい!!嬉しくて思わず笑みを浮かべた・・・その時。


 じりりりりりりんっ!!!
 突然鳴り響いた凶暴な音に、イギリスも俺も同時にびくっとした。一瞬何の音かわからず目を瞬かせる。えっと・・・?
「・・・電話、じゃねぇの?」
 イギリスが、ぼそっと呟く。あ、そうだね・・・電話の呼び出し音だね。そう納得してイギリスを見ると、彼は何か言いたげな表情で俺を見上げている。俺もなんとなく下半身に違和感を覚える。うん、わかってはいるんだ、ただ認めたくないだけで。
 そろそろと見下ろす自分のモノ・・・先程のぎちぎち感はまったくない・・・決して萎んでもないけども!えぇとつまり、電話の音にびっくりして軽くイってしまったってことだ。
「ちょっ・・・違うから!早漏とかじゃないからっ!!」
「別にんなこと言ってねぇだろ?つうかさっさと電話出ろよ、あれ絶対お前の上司からだろ、仕事サボったから」
「し、知らないっ!!」
 彼より先にイクなんて・・・っ!このままでは男の沽券に関わる!今は仕事なんかより彼を満足させることが先決だ、そう考えて腰を奮い立たせると再び律動を始める。
「あぅっ!?ま、待てよ・・・で、電話・・・っ」
 じりりりりりん、じりりりりりん。あぁもう煩いなぁ邪魔しないでくれよ、いっそのこと電話線ぶった切ってやろうかな!
「いいから!それよりここ、さっきより滑り良くなって・・・はっ、気持ちいい・・・っ!」
「ん、あんっ、お前・・・も、おっきい・・・ひぁっ!」
 すぐに先程と同じくらい堅くなった怒張を奥へ送り込んでは先端ぎりぎりまで抜いて、細い腰をキツく掴んで何度も何度も繰り返し彼の中を抉り続ける。完全に俺のペニスを受け入れる形になったそこが熱く絡んできて融けて混ざり合う。
「あ、あっ・・・も、出るっ、も、イクぅ・・・っ!」
 俺が出した精液が中でぐちゅぐちゅといやらしい音を響かせてる。淫れた音に重なってイギリスの切なげな声が鼓膜に響く。視覚から聴覚から触覚から夢にまで見た彼の痴態が俺の中に流れてきて脳内を侵食していく。犯して犯されてもうほんと蕩けそう。
「いいよ、イって・・・イクとこ見せて・・・っ」
「や、見る・・・なっあ、ふぁ、あんっ!やあっ・・・あぁぁぁぁっ!!」
 彼の腹に付きそうな程勃ち上がってだらだら先走りを垂らしているペニスをぎゅっと握って上下に扱いてやると、愛しいそれは俺の手の中で大きく脈打って白濁を盛大に散らしながら果てた。ぼろぼろと涙を流しながらびくびく身体を震わせて達したイギリスの顔を凝視する。念写できるくらい脳裏に焼き付ける。
「俺も・・・イキそ・・・中に、出すよ・・・?」
 荒い息を吐きながらくたりと弛緩してベッドに沈んだ身体を労るように撫ぜてから、強引に腰を掴んで俺のペニスをまた送り込む。
「ま、待て・・・まだ、動く、な・・・やっ、ばかぁっ!あぁんっ・・・」
 もう彼はイったのだから遠慮は要らない、がしがしと奥を壊すくらいの勢いで突く。突く。突く。
「あ、アメリカぁ・・・っ!!」
「イギリス・・・っ俺の、全部、受け止めて・・・っ!!」
 頭の中が真っ白になったと同時、身体の奥からの衝動に身を任せてびゅうびゅうと吐き出す。全部一滴残さず彼の中に注ぎ込む。イギリスはぎゅうっと締め付けて俺のすべてを受け入れる。なんて愛おしい君。
 はふはふと苦しげに肩で息をする彼の乱れた姿にじんわりと歓びが胸に満ちる。・・・もっと見たい。
「はぁはぁ・・・え、何、お前・・・?」
 最上の笑みを浮かべて緩やかに再び動き出す俺を見上げて、一瞬ぽかんと口を開けたイギリスが、次の瞬間さっと頬に朱を差してぶんぶんと思いきり頭を横に振る。
「ちょっ、待てっもうダメ、もう無理ぃっ!!」
 そんな言葉じゃもう止まらない。

×××

「あぁ――――っ!!!」
「んだよ、いきなり・・・」
 恋人になった途端身体の関係を迫られて・・・まぁ俺も乗ったけど、擦れ違っていた年月を埋めるように互いを求め合って一つになった。それはまぁいい。アメリカが童貞だったのは驚いたが、それもまぁ仕方ない、機会がたまたまなかったのだろう。とはいえ、一度ヤって満足するかと思いきやこっちの腰が完全に立たなくなるまで散々強請られてヤられまくって。もう指一本動かせないくらい疲れ果てて精根尽きてベッドに沈んでいたら、隣に転がっていた奴が突然大声をあげてわなわなと震え出したら誰だって驚く。
「い、イギリス・・・俺、やっちゃった・・・っ」
「あぁ?」
 此処に至ってヤっちゃいました発言を聞かされてマジギレしない奴がいたら見てみたい。ぎろっと殺意も多分なく篭めて睨みつけると、アメリカはわぁっ違う、違うよっ!とばたばた手を振り回して弁解を始めた。
「そ、そうじゃないんだ、君を抱いたことを後悔してるんじゃないよ!?」
「じゃあ何がやっちゃったなんだよ」
 胡乱な目でじとっと睨むと、奴はぽりぽりと頬を掻きながら視線を彷徨わせてぼそぼそと言う。
「その、本当は英国が立ち直って君が帰国してから告白しようと思ってたんだ・・・だって、今の関係で迫るのはフェアじゃないだろ?」
「なんだ、そんなことか」
「そんなことじゃないよ!俺はちゃんと対等な関係で君に受け入れてもらいたかったんだ!でなきゃ後であれは脅迫だったとか言い出しかねないだろ?君は」
「あーそうかもなー」
 投げ遣りな気分で適当に返す。ったくバカだこいつ。だったらなんで俺がおとなしく組み敷かれてやったと思うんだ、ちゃんとお前を愛してるからだろ。どんなフェアじゃない関係だろうが好きでもない奴に告られて受け入れる程俺は生易しくねぇぞ。内心毒づきつつ、そう言ってやればこいつは安心するのかも知れないが、そんな親切な気にもならない。やっちゃった発言は甚く俺を傷つけた。
「やっぱり君・・・っ!」
 視線も合わせず不貞腐れているとアメリカはさーっと青ざめて困惑した表情を浮かべた。そのまま放って置くと泣き出しそうだ。そんな顔するくらいなら素直に今の関係を喜んでればいいのに、変なところで義理堅いなこいつ。それくらい愛されてるってことか、そう思うと胸にじんわり幸せが広がる。
「じゃあさ、手紙書いてくれよ」
「え?」
「ラブレター、あの仕舞い込んでいた手紙みてぇにお前の気持ち書いて送ってくれ」
「え?え?え?」
「まさか一回ヤったらもう満足って訳じゃねぇだろ?告白やり直したいんだろ?じゃあ書けよ、熱烈なの」
 戸惑うアメリカに向かって頬杖を突きながらにやりと笑う。奴はかぁっと頬を真っ赤に染めてこくんと頷いた。どんな手紙が届くのか、今から楽しみだ。



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